第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展に日本建築設計学会(ADAN)の一員として「南阿佐ヶ谷/おおきい小さな家」を出展した。
 
「1/20」「1/100」「1/500」という3つのスケールの70cm×70cmの模型を天井から3段で吊って展示している。
南阿佐ヶ谷の家は周囲の環境との関係を充分に考えた建築であり、コンテクストが平面や断面の計画にまで影響している。3つの異なるスケールを同時に展示すること、また様々な場所に建てられた他出展者との対比から、周囲の成り立ちと建築本体の構成の関係が非常に鮮やかに現われる。
建築の持つ自立性、周囲との融和と発展性、そして主催者の考える「いまそこにある風景」をヴェネチアで発信する展示である。
 
以下は日本建築設計学会によるイントロダクションである。
「訪れなければ絶対に分からないものが空間です。建築そのものは動かずとも、周囲の環境のざわめきや、住まい手や訪れる人々のふるまいといった、ある流動的な状態の中に建築は生きています。衣服のように柔らかくはないけれど、おおらかさと緊張感をあわせもって、暮らしとともに流れゆく空気をつくる。生き物のように呼吸する複合体としての建築には、竣工写真に写しだされた精緻なイメージからは想像もつかない、ノイズ混じりで、片時も停止することのない時間がそこにあるはずです。
本展で取り上げる10の住宅は、世代の異なる10組の建築家によって設計されたものです。それぞれ日本各地の様々な場所に、ここ5年にうちに建てられ、また既にある程度住まわれています。どれもが個性的な特殊解であるようでいて、様々な建物が入り混じる街並みの中に建てられた小さな住宅は、「その場所に住まう」という大きな課題に対する、率直な答えでもあります。その「答え」は、設計者によって意図されたものを超えて、住まい手の暮らしぶりまで含めて考えられる必要があるでしょう。
本展では、それぞれの住まいのあり様に着目します。新たに取材した映像と、3つのスケールにあわせられた30の模型の展示を通して、暮らしの中にパラレルに流れる時間と、周辺環境まで含めた住まいの成り立ちを、同時に提示します。それらが見る人の中で重なり合うことで、「日本の住まいの風景」がまさに「いまそこに」感じられるメディアとして再現され、遠く離れたヴェネチアの小さな展示空間に、豊かな風景としてあられることを目指しています。」
 
展覧会:第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展
テーマ:There and Now : the Japanese Housing Scene
会期:2016年5月28日-11月27日
会場:Palazzo Bembo (European Cultural Centre)
Riva del Carbon,4793-4785,30124 Venice,Italy
主催:一般社団法人日本建築設計学会
共催:GlobalArtAffairs Foundation
出展者:小引寛也+石川典貴 山口陽登+楯列哲也+杉浦良和 松岡聡+田村裕希 森田一弥 遠藤秀平 竹口健太郎+山本麻子 光嶋裕介 可児公一+植美雪 鈴木亜生 芦澤竜一
写真:大竹央祐
キュレーター・映像:西尾圭悟
会場構成:Louie Hamilton
コーディネーター:筒井美矢子 西村清佳
プロデューサー:遠藤秀平
スペシャル・アドバイザー:五十嵐太郎