上白根幼稚園50周年記念事業
 
神奈川県内にある幼稚園内の創立50周年に際し、不足する機能の整備と園内の魅力向上を目的とした記念事業が計画された。本幼稚園は、3000㎡を超える高低差のある広い敷地に、大きな運動場や畑を有し、のびのびとした「遊び」を通して心と身体の成長を目指している。50周年を機に、広大な敷地を一つのコンセプトで統合することと今後の50年に向けた継続性のある計画を提案した。
 

○楽しみの始まりとなるブリッジ

本幼稚園はバス通園を行なっていないため、徒歩や自転車、自家用車での通園が主である。大きく南北に分かれている通園路のうち、南東側から来る人々にとって正門への通園がしにくいという問題があり、さらに南側からの通園路は急勾配の坂となっているため、徒歩でも一部危険であった。そこで、通園に利用できる緩やかなブリッジを計画した。ブリッジは、樹木の中を円弧を描くように進み、通園する楽しみを醸成する。勾配を極端に緩やかにし踏板を木材でつくることで、ブリッジ上で座り込み、園児同士や親子での談笑など多目的に利用されることを想定している。ブリッジ上には「おはよう広場」が整備され、南北から通園した園児たちが出会う場となっている。
 

○雲のようなトイレ棟

もともとプールだった場所を塞ぎ、運動場や畑作業の際に用いるトイレとして整備した。トイレは日中のみの使用となるため、電気設備を使用することなく明るく清潔感のあるトイレが求められた。外壁全面をポリカーボネート中空板で構成し、屋根にも太陽光を透過する素材を用いている。遠く富士山を望む高台にあることから、雲のような浮遊感のある建築とした。
 

○園舎と運動場、畑をつなぐ複合遊具

幼稚園には園庭に遊具がいくつかあったが、老朽化により安全が担保でない状況となっていた。本幼稚園は、「遊び」を通して心と身体の成長を目的とすることから、自ら考え新しい遊びを発見していく遊具を計画することとした。さらに、園舎南に設置されたブリッジから、園庭、園舎、運動場、畑という園全体の連続性を持たせるため、鉄骨フレームにより方向性を持たせ、敷地全体の一体性を高めた。鉄骨フレームに対してネット遊具やうんてい、のぼり棒などの遊具のような部分を設定しているほか、ベンチやパーゴラなどが配置され、送り迎えの際の休憩・談笑の場となるように意図した。さらに、フレームのみの場所は今後拡張可能な部分として残し、今後50年先の未来に向けた成長の余白とした。
 
 
設計・監理
株式会社空間構想
小石川建築ノ小石川土木
 
所在地:神奈川県横浜市
用途:幼稚園(ブリッジ、トイレ棟、複合遊具)
 
■トイレ棟
構造:S造
規模:地上1階
面積:7.42㎡
 
竣工:2023.4
写真:藤井浩二/TOREAL
 
location:Kanagawa,Japan
use:Kindergarten(Bridge, Toilet, Playground equipment)